『英二、今日何かあった?』










不二の言葉に、菊丸はドキッと心臓をならした。





バレてる?





悟られてる?







ドンドンと大きくなる心臓音に、菊丸の頭には不二の言葉が遠のいていった。

頭から血の気のひいた顔で、

いつもより細い声で。

喉を僅かだけ鳴らして、


菊丸は声を振り絞った。





「な・・・んで?ナニも・・・ないよ?」






震えた声は、明らかに何かを意味するものだった。










だが、コレが、菊丸にとって唯一出た言葉だった。



当然、不二はそんなのは何かを隠している。

そういうのは当に見破いていた。





目を細めて、ベッドから菊丸の名前を呼んだ。


「英二、ちょっと来て」










ちょっときて。

菊丸はその言葉にひどく反応した。

もう、隠すすべはない。

首筋についた跡は今更消えるものじゃない。



消えて欲しい。


そう、何度願ったか。



不二に見つかる前に。







菊丸は、寝転がっていた体を起こし、大きく脈打つ心臓を抑え、不二の方へ歩いていった。

ドクンと鳴る心臓さえ、不二に聞こえそうで。



菊丸は左手で首筋を押さえ、そして不二の前に立った。



座っている不二を上から見下ろす感じで、不二は菊丸を見上げるような位置関係。




菊丸はキュッと首筋の手に力を入れた。



こんなに近くにいる。





菊丸の行動に気付かない分けない。

それでも菊丸は、最後の足掻きのように、その手を放さなかった。

ここで総て打ち明かせば、楽になれたのかも知れない。

でも、事は既に遅かった。



































雨が、強くなるのを、菊丸も

そして不二も感じた。


























菊丸は不二の前に立つと、苦い笑いをしながら、話しかけた。

「にゃ・・・にゃに?不二・・・」


あからさまに震える声で。




「英二・・・」

不二はそっと菊丸の頬に触れた。それは、右の頬で。

左の頬ではなかった。

左の首筋のことには、気付いてるのだろうか?


不安を抱えても

それでも、菊丸は不二の甘い声によわされる。






目をうつろにし、自ら不二に抱きつく。

不二のそれを受け止め、菊丸の背中を強く引き寄せる。


「ふじ・・・」



「英二・・・」



不二は、菊丸の腕を掴むとゆっくりとベッドに埋めた。

その拍子に、綺麗に菊丸の腕が開かれた。


だが、首筋から手が取れていることすら菊丸は気付かなかった。





そして軽く唇を落とす。

軽くのあとは強く。

求め合い。銀の糸を引かす。

クチュリと、漏れた液も気にせず、二人は手を絡めた。

長いキス―――

「ふ・・・じ・・・くるし・・」


長いキスを求められ、流れるのは不二のから移されるもの。

酸素が欲しくて、口を大きく開くとそこから更に責め立てられる。

不二の舌が、菊丸の口腔に入り込み、歯形をなぞる。

湿った音を鳴らし、

不二は菊丸の左手に自分の左手を合わせた。


そして、菊丸の唇から、首筋にキスを落とした。



その瞬間、菊丸の体がビクリと跳ね上がる。

忘れていた。

いや、忘れさせられた。

首筋の・・・・赤い痕・・・・。




ドクンっと心臓が鳴った。

それはさっきとの行為の証ではなく、明らかに違うモノ。



「英二、こんなものをつけて、よく僕の所にこれたね」


心臓に何かが突き刺さった気さえした。



そんなことばが、どこか痛くて。

どこか悲しくて。


でも、涙は流れなかった。











不二は菊丸の首筋についた赤い痕のうえから更に自分の証をつけた。

獣のように噛みついて、強く求めて。

強く吸い、菊丸の口から痛みの声が漏れる。


「ん・・・あはぁ・・・」



「消してあげるよ。」








不吉に笑い、そして不二は菊丸の淫らな制服のボタンを外した。


「不二・・・・っ」






ボタンを外していく不二の手にそっと菊丸は手を握った。


本当は、止めて欲しかった。

抱かれたくなかった。

しかし、止めようと思った手に力は入らず、結局自分から不二を招き入れた。















露わにされた、菊丸の白い胸部と、肌。







不二は首筋にもう一度口づけを落とすと、そこから下へ移動していった。



左右に散った赤い突起を指で弾いて、摘んで。

もう片方は自分の唇をのせた。




指で弾くたび、舌で転がされるたび、菊丸は声を上げた。


「んんっ・・・ふじ・・・」

「英二・・・」


「あぁあっ」



摘んで、少し引っ張ってみたり、まるで幼い子供のように悪戯する不二。

そう、これは小さい子供の焼き餅なのかも知れない。





のぼせたような顔をして、菊丸が息を切らす。

「ふ・・じぃ・・・」

「英二・・・」






不二が胸の突起から手を放し、下へと手を伸ばした。

ビクンと、条件反射で跳ねる菊丸の体。





下のズボンのベルトを外し、脱がし、菊丸のモノを露わにする。

それは、先程の行為で感度を増し、外気の冷たい空気に比例し熱い熱を持ったモノ。


天に向かって、透明な露を漏らしはじめている菊丸のそれをやんわりと不二は包むと、

何か企んでいるように、そして、菊丸に向かって言葉を放った。

「英二・・・どうして欲しい?」

「・・・えっ?!」



今までそんなことを言われたことなどなかった。


菊丸は、混乱して頭の中が真っ白になった。

熱を持った自分をどうにかしたい。

不二に触れられているところが熱い。そしてジンジンと痛い。


きっと不二は知っていっているのだろう。


菊丸のモノから、聞こえる鼓動と脈動を。








「英二、何か言ってくれないと分からないよ」

そういって、不二はキュッと根元を強めに掴むと、

菊丸の首にキスを落とした。

そして、鎖骨。




「ああぁあ・・・っ!んん!」

与えられる快感と、止められる欲望が、どうしようもなく菊丸の体に残った。

そしてその快感の波は大波となり容赦なく菊丸を突き立てる。

自然に力がこもり、シーツが皺を寄せる。

「英二・・・」
































それから、菊丸が降参したように、不二にポツリと言った。

今にも消えそうな声で、弱々しく“不二・・・お願い・・・”と。



“答えになってないよ”と、不二は言おうと思った。だが、菊丸の目にいっぱいに入った涙が、

そうさせなかった。

瞳を閉じてしまえば、たちまち頬を伝い出すであろう涙が。どこか不二の心を許してしまったのだろうか。


不二はふぅっとため息をつくと、菊丸の今にも溢れそうなくらい目尻にたまった涙を舌で掬った。









そして、再び菊丸のモノに手を当てて、キスを落とした。

優しく触れて、時期に咥内に含み、下で丹念に扱き上げる。

クチャと淫らな、湿った漏れる音を部屋に響かせ。

感じるところを酷く責め立てる。

「ああぁ・・ああ・・ん」

そして涙を流す菊丸。

大きな目から、大きな涙の雫がついにシーツを濡らした。





それでも、それはいつもの菊丸のことで、不二は止めようとしない。


舌を使い、強く吸って。


「駄目っ・・・不二・・・もう・・・」

菊丸が絶頂の近いのを知らす。

それに合わせて、不二も喉を鳴らす。

絶頂の波が、もうそこまでというところで、不二はにやりと笑った。

不吉な笑みで、制服のポケットから何かを取り出すと、無造作にそれを菊丸の根本に押しつけた。

パチンと、無機質な金属独特の効果音を立ててそれは口を閉じ、リングのような形になった。

そしてそれは同時に、今解き放たれようとしていた菊丸の熱いものの出口を塞いだ。


「ひゃあぁっっ・・・!」





あまりの冷たさに、そして放たれることのなかった熱が体を蠢く激痛に菊丸は声を上げた。

冷たい。そして放たれることなかった熱が籠り、菊丸の体はドクンと心臓をならした。

不適に笑う不二。

今、自分を戒めているモノは、不二の手でも、なんでもない。

無機質で冷たい。



銀色のリングだった。











震えを手で、それに触ろうとするけど、勇気が出ない。

殺したような声で菊丸が不二に言った。


「い・・・イタ!いたい!!な・・・に・・・?・・・っああっ!」

「お仕置き。菊丸、いい?はずしちゃ駄目だよ」



駄目だよと言われても、籠った熱を出したかった。

しかし、それはこのリングでしっかりとふさがれた。

「痛いよ・・!ああっ・・・!ひっく・・・は・・・はずしてぇ・・・」


必死にリングを外そうと、自分のモノに手を伸ばす菊丸。

どうにかしたかった。籠るままの熱は決して放たれない。

必死に助けを求めても。それは叶わなかった。

不二は菊丸が自分のモノに伸ばした手を掴むと、軽く手の甲にキスを落とした。


じんじんと、心も体も痛くなっていった。

どうにかなってしまいそう。そんな思いだった。









「僕がいいっていうまで、それをちゃんとつけておくんだよ。」

不二の言葉はあまりにも残酷だった。

放たれることのなかった熱を抱えたまま、菊丸は着替えさせられた。

そして、明日も普通に学校がある。熱を持ったまま、狂いそうになるのすら抑え、学校に行かねばならない。

酷な話。

菊丸は今にも泣きそうになったが、必死に目尻にたまる熱いモノを抑え、

理性を保たせた。



























熱を持ったまま、決して取れないリングを付けたまま。

菊丸は不二の家を出た。


不二が怒ってるのは知ってる。






不二を怒らせたのも自分だ。
















きっとどこかで悔しくて、


心が寂しくて。








雨の降っている中、傘も差さずに菊丸は家路をたどった。



















雨と化した涙に、気付いた人はいるだろうか?







ようやく菊丸は家に着いた。

ヨロヨロした足で、ようやく階段を上り自分の部屋へとついた。

今日は兄もおらず、幸いこの部屋で自分一人だ。

「痛い・・・・」

ポツリとそんな言葉を漏らすと、菊丸はベットに体を投げた。

寝れば・・・寝ればこの痛みは収まるだろうか?

いつまでたってもひいてくれない、この痛みを消し去ることは出来るだろうか?

菊丸は必死に寝ようと瞼を閉じた。

しかし、痛みで腫れ上がり、きつく締められ、これがどうして快楽にならないことがあろうか。

菊丸は意を決して、自分のものに手を伸ばした。

外せれれば・・・。せめて、そうできれば。自分がこんなにおかしくなることもない。

カチャリと、学生服のズボンをおろし、自分の半身をベットの上で露わにした。

まるで今から自慰をするような光景。菊丸は目をキュッと瞑った。

しかし、この行動は裏目にでた。

緊張して、手が思うように動かない。それと同時に、謝って触ってしまったところに快楽の波が押し寄せ更にリングをきつく締める。

「ひゃああっ・・・・!」

その度に幾度か漏れた声。

姉たちは新年会だの、この季節は忙しい。今日は帰っていない。

菊丸は、リングにこれ以上手にかけるのは危険だ。そう思い断念した。

幾度か涙が流れ、それでも我慢して。生理的な涙を絶やさず。


夜は更けていった。








明日も普通に学校がある。

もちろん朝練もあって・・・。





























朝になり、自然に目が見開いた。

目の下は腫れ上がり、昨日の状況を露わにしていた。

外を見てみると、最近続きの雨が未だにしんしんと降っていた。

空を見ると果てしなく広がった積層雲。

当分止みそうにない。


菊丸はそう考えると急にからだがだるくなった。

今日は学校へ行きたくない。そうすら思った。

しかし、現実は時に牙を剥く。母はそう甘くないため、それくらいのことじゃ休ませない。

“やすみたい”そんな言葉すら、はいはいと流され、菊丸は朝食をとり身支度をする。

明らかに腫れた目。そして大石に付けられて跡なのか、不二の跡なのか。赤い痕が学ランの詰め襟の横から見える。



「・・・・」


無言でその痣をかくし。菊丸は学校へ向かった。

今日は朝練を休んだ。こんな体だ。運動して体を温めたら自分がナニをするのか分からない。

これ以上体を熱くしてはならない。歩くことさえ嫌悪感を走らせる。

下着に擦れる自分のモノが、微かに熱を持つのが分かる。そうなる度に、腫れ上がり自然にリングにふさがれ、痛い。

目尻に不意に涙がたまる。

菊丸はやっとの思いで学校へ着いた。

































教室に入っても、菊丸にとっては決して気は許せなかった。

周りのうるさい騒音。気を紛らわしてもくれない。クラスの友達はと言うと、やはり思春期な話をしてくる。

「英二、顔赤いんじゃない?」

くすくすと、悪戯のように笑う不二。

不二がそう言うと、周りの男子まで、不二の言葉に反応してからかう。

そんなのが凄く苦しかった。


授業中は隣の席の不二が決定的だった。

今日に限って菊丸は教科書を忘れ、隣の不二に魅見して貰うため、机をくっつけた。しかも、状況は更に悪い。

席が一番後ろなため、誰も不二達が何をしても気付かない。

先生が黒板を書こうと前を向くと、ふと不二が菊丸の方を向いてきた。

ドキッと、心臓が高鳴る。

「英二、ちゃんとつけてる?」

小さい声で、くすっと不二が笑った。

「・・・・」

恥ずかしくて何も答えない菊丸。

隣にいると言うだけで感じてしまっている自分はなんなんだろう。淫乱魔のような、そんな自分が嫌だったから、一刻も早くこの授業が終わってしまえばいい。そう思っていたのに。

不二は悪戯に笑うと、菊丸の股間に手を伸ばした。そして、服の上から、ゆっくりとその形をなぞり始めた。

「!!」

流石にコレには驚きを隠せない。しかし今は授業中。いつ先生が黒板を書き終えてこちらを向くか分からない。そんなリスクが、不二と、菊丸に新

たな快感を覚わせた。

ズボンの上から、根本を確かめるように移動する不二の手。

「んん・・・っ!!」

必死に声をこらえたのはいうまでもない。教室だ。先生も、生徒も、友達だっている。

誰にもばれてはいけない。バレてしまったら、それで総てが終わる。

菊丸は不二に与えられる快感で涙。そして喘ぎの声を押さえつけた。

喉がはち切れる程の激痛。

「・・・・た・・・」

不意に漏れた声。幸い小さすぎて誰にも聞こえてないようだ。

授業が終わると菊丸は教室を急いで出た。

苦しかった。このおかしくなるくらいため込んだ熱を、放出させたかった。菊丸は、中庭の陰まで走った。トイレとかは人の出入りが激しいため、そこ

にはいけなかった。だれも・・・ナニもないところにいきたかった。

菊丸は学校の中庭と校舎を繋ぐ渡り廊下の影に座った。







ここの廊下から繋がる校舎は、学校の中でも特に古く、本当に特別な教室ばかりなので3年生の生徒が週に1限使うか使わないかぐらいだ。

菊丸はふぅっと深呼吸をした。しかし、それくらいじゃとても収まる熱じゃなかった。

痛い。苦しい。おかしくなるくらいの熱に襲われ、菊丸の判断状況は少しずつ犯され始めてきた。

はぁはぁと、熱い吐息を漏らし、頭をコテンっと壁に付けて下へしゃがみ込んだ。










ふとそんなとき、とても優しい声に菊丸は名前を呼ばれた。

「英二?」


「え・・・?」

呼ばれた声のする方に顔をやるとそこには大石がいた。誰も来ないと思っていた校舎から大石が出てきた。

「にゃ・・んで・・・おおいし・・・こんなところ・・・に?」

「なんでって委員会の仕事で・・・」


さすがにあからさまに、顔が赤く、どうしようもないくらい目尻に涙のたまった目を見れば菊丸の変異に誰もが気付くだろう。

「英二、お前どうしたんだ?」


優しい大石の言葉にふと菊丸が涙を流す。

「お・・・いし・・・ぃ・・・」

「英二・・・っ」

フラフラと立ち上がり、大石の方向へ歩み始めた菊丸の体を、大石は手に持った荷物を地面に投げ捨て支え込んだ。

それはテニスをしているというのには華奢すぎて、しなやかな体。

少しでも力を入れてしまえば、壊れてしまうのではないだろうか。

髪の毛から微かに臭う、甘い香りの頭髪剤の匂い。

ドサッと音を立てて、菊丸は脆くも大石の腕の中なかにおさまった。大石は菊丸を強く抱きしめた。

「ゴメン、英二・・・この前は・・・」

すると、菊丸から大石の予想外の言葉が出てきた。

菊丸は暫く黙り込むと、熱い吐息をのみこんだ。

そして、震えるような、途切れた声で。ポツリと呟いた。


「大石・・・・抱いて?」












自分が何をいっているのか、

それがどういう意味を表すのか。

そんなこと、考えている暇は菊丸にはなかった。

ただ、止めどなく溢れては蓄積していきそうな精に、菊丸はついに我慢の限界を過ぎた。

いたい。脈打つ精を解放したくて、今はそれしか考えてなかった。

早くこの脈動を消し去りたい。自分を犯すモノを体内から消し去りたい。

そうしないと、とても菊丸の精神はもたなかった。




大石は、涙を頬に這わす菊丸の、その媚態に心を奪われ、為すがまま。

気がついた時には既に遅かった。

自分が、菊丸の制服のボタンに手をかけ、

悪事は始まっていた。

いけないと分かっていても、心では分かっていても、体が反応してしまう。

菊丸の潤んだ目が、火照った躰が。

大石を決して離さなかった。逃がさなかった。






大石は菊丸の体を支えると、ゆっくりと茂みに沈めていった。

プチン プチンと菊丸の学生服を脱がしていく。そして露わになっていく菊丸の体。

外気にあたり、もうすでに菊丸の胸の突起は赤く色づき、そして硬く立っている。

それを指に挟み、丁寧に愛撫していく大石。

「んんあっ・・・!や・・・っ!!」

まだ愛撫を初めて間もないというのに、菊丸の体は大きく跳ね上がった。そして、涙を幾度となく流した。

大石は目を丸くし、菊丸に話しかけようとするが菊丸はそれどころではなかった。

「ひゃあっ・・・い・・・っつ・・・」

何かの激痛に絶えているようだった。大石はそれがなんなのか、まだ分からない。

菊丸は、ジンジンと忘れかけた痛みがまた浮き上がってきた。

「いたい・・・おおい・・・し」

「英二っ?」



自分の股間に手を当てて、必死に身をよじる菊丸。

何か、とんでもない嫌な予感がする。

激しく涙を流し、痛みから解放されようと、喉を殺した声で叫ぶ菊丸。そして赤く火照ったからだ。

「英二っ!!!」

何かに気付いたように、大石はとっさに菊丸のズボンのベルトに手をかけた。

カチャリと、無機質な音を鳴らし、菊丸のズボンを下着ごと下に引き下ろした。
































「英二・・・」

案の定、嫌な予感は的中していた。

空に向かい、高く我を主張している菊丸の花芯。先端からはもうすでに透明な蜜を漏らし、何もかもが普通の光景ではなかった。

それを明らかにさせるのは、菊丸の花芯の根元を取り巻いている銀色のリング。

それはいったいなんなのか。

それは明らかだった。



早漏防止リング。


―――――そう呼ばれているモノ。












無機質な銀色の物体は、菊丸の根元を強く戒め、精を出すのを防いでいる。

そのため、菊丸はひどく苦しがっていた。










「えい・・・じ・・・これ・・・」

「ふえっ・・・ひっく・・・うっ・・・」

「英二!」






急にムキになり、仰向け状態の菊丸の顔のすぐ横に手をたたきつける大石。

そしてその場にあった芝生を掴んだ。

ブチブチと、あっけなく切れていく芝生。




それでも、菊丸は泣くばかりだった。

神経を切り裂かれる思いを唇で噛みしめながら、弱々しく立ち上がると菊丸は震える手でボタンをはめ、ズボンをはき。

制服を整えた。

膝をがたがたさせながら、激痛に顔をゆがめながら。

それでも、苦い笑いをし、涙を溜めた跡の腫れ上がった目を開け、菊丸は大石に話しかけた。




「ごめ・・・大石・・・きょうし・・・つ・・・もどろ?」



「お前、でも・・・!そんな体で・・・」



「かえろ・・・よ?」



「英二!」

















「・・・・・・・帰る・・・んだよ・・!!」


目をギュッと瞑って、腕に込めた力で、握った手がわなわなと震える。

がくがくする腰や足でさえ。

総てが重荷だった。

菊丸は大石の優しい言葉が、態度がひどくいたかった。

総ては自分のせいなのに、罰を受けてもなんともいえないのに。

自分の立場を、酷く嫌った菊丸。

大石に向かい、大声でそう吐き捨てると菊丸はよろついた足で、少しずつ校舎に戻っていった。




大石は菊丸の背中を見ながら、ポツリと言葉を漏らした。


「英二、いいんだな・・・」

























菊丸はそっと、後ろにいる大石の方は決して振り向かず、

泣いたような、笑ったような。悲しい声で。

「う・・・ん・・あ・・・りがと・・・」




















何を求めているのか。

求めようと思っているモノはいつも高見のもので、そうやって、自分の腕から離れていく。

大石は散らばった筆記用具を手に取ると、ふぅっとため息をついて教室に向かって歩き始めた。





























もう授業は始まってしまっただろうか?

廊下や、階段は静かだ。

教室から、先生の声と僅かな生徒の声が聞こえる。今、教室に入っていけば確実に注目を浴びるだろう。

そして、己の異変に誰か気付くだろう。

そう考えると、菊丸の足が急に重くなった気がした。

教室へは行きたくない。





「そうだ・・・!」







菊丸はとっさに、180度体を回転させ、教室とは全く反対の方へと足を運んだ。










足を運んだ先は保健室。



















今の授業が終わるだけでいい。それだけでいいからやすみたい。

未だにリングを付けたままの菊丸は、酷く体力を消耗していた。消耗していた、そう言うよりは、食を摂らなかった。

そう言う方が正しいのかも知れない。



ガラリとドアを開けると、保健室には誰もいなかった。

菊丸は、いないなら、いないに越したことはなかった。


ベッドへと足を運ぶと、そのまま無防備にベッドへ飛びかかった。

そして、熱を持ったままの己を、ズボンの上から自然に抑え、体を縮め。時間の経つのを待った。


カチカチと保健室の時計の針が、一秒ずつ時を刻むのを感じていた。






















暫くして、菊丸の目がうつろになりかけた頃、保健室のドアがガラリと開いた。

「・・・?」

先生だろうか?それにしては足取りが違う。

保健室の先生は、女の、若い先生なのでこんな生徒のような上履きの音はしない。


生徒のような・・・上履きの音?











菊丸はとっさに足下の布団を頭までかけた。

保健室の作りは、ベットが一つ一つカーテンで仕切られている。





その足取りは真っ先に菊丸の所へ近づいてきている。

それは隠しきれない、行動だった。




ドクンドクンと反応するからだ。

自分の両肩を抱きしめ、菊丸は目をギュッと瞑った。

自分が今こんな状況だ。

誰にも見られたくない・・・と。




カーテンを開けられ、ベッドに重みがかかり沈んだ。







菊丸の後ろ姿を綺麗に笑う少年。





彼は菊丸の寝ているベッドに、一緒に寝転がると、後ろから菊丸の耳元で囁いた。




「英二・・・」

ふっと息を吹きかけるように、優しい声で。



ビクッと反応し、菊丸が不二の方を向く。





「ふ・・・じ・・・」

大きな目の目尻に涙を潤ませ、菊丸は不二の手を握る。












痛くもあり、暖かくもあった。

不二の手を握った手が、震えていたのは、二人しか知らない・・・・






震える手を重ね、暖かい笑顔に支えられ、不二の方に体を寄せる菊丸。

「ふ・・・じ・・・」
「英二・・・」





名前を呼ばれるたび、胸の奥の熱いものを感じ、鼓動が高鳴った。
喉の詰まるような不快感と、違和感に菊丸は身を捩らせた。


「不二・・・オレ・・も・・う」
涙を溜めて、手を震わし、喉を絞った声が出た。

「うん・・・英二・・・」


なにをいえば伝わるのかそんなこと考えもしなかった。
菊丸はぐっと不二の首に巻き付いて、きつく体を寄せた。

「えいじ・・・」

隙間もないくらいきつく触れ合った体に、菊丸のモノも感じる。
高く高ぶり、脈動を走らせているのが近くから空気を伝わってきた。

空気中なのに、菊丸のその上には布が遮ってるのに。
ドクンと、何かを感じた――――・・・

ドクン・・・ドクンと、心臓の音が高鳴る。



ドサッと位置を回転させ、菊丸をベットのシーツの海に敷き、上から
くちゅりと、滑らせた音を響かせて、額から順に唇を落とす不二。
目尻に溜めた涙を舌で掬うと、菊丸の顔を見た。

「英二・・・感じてる?」

その瞬間、ビクンと菊丸の体が跳ねる。
服の上から、形をなぞるように指を菊丸の下半身へのばしたのだ。

「ひゃああっ・・・・あ・・・」

綺麗に形を強調して指を這わす不二。それを止めようと、必死の抵抗で菊丸は不二の腕を掴む。
しかし、快感に犯された神経は言うことを聞かない。
止めようとしても、体に力は、入らない。

まるで小さい子に悪さをするように不二は悪戯に笑い、口の端を歪める。
「だめっ・・んん・・・不二・・・」

「なんで?」

直で耳元に囁かれる単語。
「こんなに感じてるのに、今止めていいの?」

いいはずがない。止められて困るのは菊丸の方だ。気のおかしくなるくらい、溜められた欲望を出せないでいる。菊丸の方がよほど苦しかった。
ここでとめられては困る。
途中まで出かけている熱。ここで出さなければ、何かが壊れる気がした。

「んん・・・・っ」

少しだけ、不二の腕を掴んでいた腕に力がこもったが、それもすぐ終わった。
ギュッと捕まれ、力を抜いた菊丸。
今はただ、その手は不二の腕を掴んでいるのではなく、柔らかく包んでいるといった方が都合にあった。

「いい子だね・・・英二」

耳を甘く噛まれ、弓なりに反った体を。綺麗に上から見下ろす不二。
額に落としていた唇を、目尻、そして唇へと落としていった。

「んあ・・・はぁ・・・」

唇の上を覆い被さるように、軽くキス。
そして深く、強く、舌を絡め取る。もうどちらの唾液か分からない銀の糸が離れた口からこぼれ落ちる。
学ランのボタンを外し、露わになった菊丸の胸の突起を指先で転がし、先端をぐっと押しつぶす。
「んあっ・・・はぁ・・」
舌を使い、鎖骨から赤い痕を落としてくる。
散りばめた花のように、所々を赤色を染めていく。
菊丸の半身の方では不二の手が、玩具を扱うように指に絡めて服の上から菊丸を弄ぶ。
根本から先端に向けて指を這わせ、先端部分を爪で押した。

「ひゃあぁ・・・っ」

冷たい器具に根本を締められ行き場をなくしてもう何時間も経つ体の中の精に火がついたように、体が熱くなる。
じんじんと、激しく痛み出すそこ。
「不二・・・っ!いた・・・い・・・これ・・・はずし・・て・・」

「外す?我儘だね英二・・・でもどうしても外したいなら僕をその気にさせてみせてよ」
「え?」
始めはこんなこというつもりなどなかった。
ただ、愛しく。僕だけを見てと、抱くつもりだった。だがその気持ちはもう不二の中にはなかった。
涙で顔を濡らし、火照ったからだという媚態をもっと見たかった。
不二はそういうと、サディスチックに口元は歪めて笑った。

「不二・・・のを?」
「そう・・・僕の」
「いつも僕が英二にしてあげてることだよ」
菊丸はドキッとした。いつもされていることでも、自分からしたことはなかった。
だから、どうしたらいいものかと多少戸惑った。
「やるの?やらないの・・・?」
それでも不二は菊丸に問う。
菊丸が答えを言おうとしたその時、菊丸の体がビクンと震えた。
「ひゃあっ・・・っ」
不二が菊丸のそれを握ったのだ。菊丸はシーツに伸ばした手に力がこもる。
「どうするの?英二。」


「・・・やる・・・」
降参したような声で、菊丸は上半身を起こした。
もう降参せずにはいられなかった。根本が苦しくて出口をほしがって。残る選択はそれしかなかった。
不二は無言のままで、少し微笑し、握っていた手をゆるめて、するりと菊丸自身から離した。
菊丸は、仰向けの状態から上半身を起こし、不二と向かい合った。
そして、恐る恐る不二の下半身へと手を伸ばした―――・・・

ズボンのホックを外し、ズボンと下着を下に引き下げた。
露わになった不二は、もう空高くに向かい始めていた。

それに触れ、軽く下を擦る。
上下にゆるりと動かしていく。そして、指をたくみに使い絡めていく。
不二にされているのと同じように、菊丸は不二を刺激した。口にくわえ込み、喉を鳴らした。
「ん・・・英二・・・」
「う・・・う・・・」
不二の根本からゆっくりと先端にかけて舌と指先を使った。
なま暖かい感触、そして喉に届く肉の嫌悪感。
くちゃっ、と濡れて湿った音が部屋に鳴り響いていた。
菊丸はそれと闘った。

舌で不二の先端を軽く押しつぶし、周りに垂れた先走りの液を舌ですくい上げる。
だんだん、動きを巧みにしていった時、不二が口を開いた。
「え・・じ・・」
「んん・・」
「もう、いいよ・・・」
「でも・・・不二まだイってな・・・」
途中までいいかけた菊丸の唇を強引に塞ぎ、不二は菊丸の腕を掴んで後ろに押し倒した。

「ふ・・・じ・・」
「英二がイかせてくれるまで待てないみたいだ」
「え?あ、・・・ひゃああっ」
不二はさっきまで菊丸の唇を塞いでいた口を今度は菊丸の股に埋めた。
「ふ・・・あ・・・はぁ!」
ダイレクトに伝わる感触に、菊丸は身を捩らせ声を上げた。
ひんやりと冷えた指先で扱われ、根本がきつく閉まる。
「い・・・いたいっ・・・いた・・・」
舌先で菊丸を根本から裏を伝って舐め上げる。
「お・・願い・・・も・・・う」
涙をこぼしながら悲願する菊丸に、不二はクスッと笑った。
「英二、ご褒美だよ」
くぐもった声を銜えたまま出し、不二は菊丸を長い間戒めていたモノの口を開いた。
カチッと金属の音がしたのと同時に、それが床に落ちた音がした。
「あんぁあっ・・・」
菊丸は、長い間閉ざされていた熱を一気に不二の口の中に吐き出した。
ごくりと喉が鳴り、菊丸は我に返った。不二は今自分のモノを飲んでしまったのかと。恥ずかしい思いにとっさに言葉が出た。
「あ・・・ごめ・・・不二・・・」
「いいよ、英二のだし」
「でも・・・」
不二はそういうと、クスッと笑い、口元から垂れていた白い液を掌の甲で脱ぎとった。
「ね?」
「・・・・・・・うん・・・」
不二の笑顔がいつもの戻ったから。
菊丸はそれ以上何も言えなかった。



「いい?いれるよ?」
「ちょっと待って・・・だ・・・だれか来るかも・・・」
「今更止める気?英二」
「そういうわけじゃないけど・・・」
「じゃあv」
「わ〜・・・」
半分強引に菊丸に”うん”と賛成の言葉を言わせた不二は、ツプリと菊丸の後孔に人差し指を差し込んだ。
「んあっ・・・」
不二の細く長い指が、菊丸の中を掻き回す。
くちゃと、隙間から動かす度に嫌な音を立てた。
「英二、もう一本増やすよ?」
「んん・・・」
クスッと口元を上げたのが分かった。
優しく、それともサディスチックに?

2本になった指が、ゆっくりと菊丸の体を解す。
「ん・・・あ・・ああっ!」
不二は菊丸の性感帯と呼ばれるところを知っていた。そしてわざとそこばかり責め立ててくる。長く細い指が、そこばかりをつつく。
「ひゃあっ・・・も・・・ふじ・・・」
「うん」
不二は己を支えて菊丸の後孔に押し当てた。そしてゆっくりと自分を埋めていった。
「ああ・・・っつ・・・」
幾度と情交を交わしたといえど、けして慣れない菊丸の蕾。そしてそれは同時に不二自身を強く押さえ込んで、進入を拒んだ。
先を飲み込んだだけでも体が引きちぎれそうな激痛が襲った。
「英二・・・力抜いて・・・」
「ん・・はあ・・・」
不二は軽く、菊丸の唇を吸って、力を抜かせ自分を最奥部まで埋めていった。
どくんどくんと、不二のモノが脈を打ってるのが分かる。
じんじんと後孔が痛み、菊丸の目から大きな涙が生理的に落ちてシーツに暗いシミを作った。
キツクしまった後孔を解そうと、不二は大きく円を描いた。
「あ・あ・・・ん・・ん・」
菊丸の喘いだいつもと違う声が聞こえる。
「もっと聞きたい、英二の声」
どんどんと欲望深くなっていく不二。自分だけのモノに。
「あ・・・不二・・・ふじぃ・・・」
グッとシーツを掴んでいた手を不二の方へと伸ばし首元からぐっと力強く引き寄せる。
それを合図に、不二はゆっくりと腰を進めた。
リズムカルに揺れてきしむベッドの音。
「んっは・・・あ・・・」
「英・・二・・・」
「不二・・」
グッ痛さが快感に変わってくる。最奥部を突かれてはすぐ抜かれ、そしてまた奥を突かれる。
揺れる体を支えながら、不二は菊丸の奥を攻め続けた。
「んはっあっあ・・・」
「英二・・・」
繋がったそこからは絶えず湿った音が漏れた。
「英二はどう思ってるか分からないけど、僕は英二が大切なんだよ。一番なんだ。それをのこのこキスの痣をつけたまま来れるんだ、英二は」
「んあっはぁ・・・っ」
「英二・・・」
絶頂が近くなっていく二人。
いっそう早くなった動きに、菊丸の体が大きく揺れた。
「お・・ねがい・・・ふじ・・・っ」
菊丸の言葉が引き金となり、不二は菊丸の胎内に精を放った。それと同時に、菊丸も2度目の射精を放った。
ドクンドクンと、液が流れていく感触は、まだ僅か15歳の少年にとっては快感の渦だった。








その次の日、菊丸は大石に話しかけた。
部活が終わった後、鍵当番の大石は当然一番遅くまで部室の中にいる。
部室の外では不二が、壁に足をつけながら待っていた。

「大石、ゴメンね・・・やっぱ不二が・・・その・・・」
「好きなんだろ?」
「え・・うん」
「もういいから、早く不二の所に行ってやれ」
「うん」
大石の笑顔も柔らかかった。菊丸は無防備に笑って。ドアに手をかけ大石に背を向けた。
「な、大石」
「?」
背を向けたまま大石に話しかける菊丸。
「全国、行こうね」
「ああ、当たり前だ」
”へへ”と菊丸が照れ笑いしてるようにも思えた。菊丸はそれを言い残すとガチャッとノブを回しドアを開けて去っていった。閉まりきらなかったドアの隙間からは不二とは知って校門までかけていく菊丸の笑い声と姿があった。
夕焼けに染まった赤い太陽が、赤い光ともらし、空気を赤色に染めていった。
雨で湿って軟らかくなった土が、二人の足跡を残していった。


部室の鍵が突いているキーホルダーの話の部分を人差し指に差し込んで、大石はその鍵とくるくると回した。近くにある椅子に腰掛け、ふと物思いに天井を見つめた。3年前、見た天井と一つも変わらないそこは、妙なほどに大石の心を落ち着かせた。

そして、口元をクスリと歪め、大石は独りでに部室で呟いた。

「全国―――・・・か・・・」
と。


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雨も完結です。どこからか、いつからか、雨という話題がなくなっていますね。
苦し紛れのように最後の方にちょっとだけ触れていますが(^^ゞ
大石先輩・・・いい人になれたかな・・・ということだけが、ちょっと心残りです。(苦笑)

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