38.5°
新しく青学テニス部に入ってきた少年は、ケガはするものの弱音を吐いたり休んだりということはまずなかった。
それは両親を始め、みんなが分かっていたことだ。
そして誰より生意気なその少年からは”弱い”という単語は誰も連想しなかった。
父に当たる南次郎は、幼いころからのリョーマをよく知っていた。
そして、大きく成長するその様を見ないようでずっと見てきた。それ故、南次郎はリョーマのことを一番分かっているのかと思う。
今日もまた、電子音で響く朝が来る。いつものように南次郎は寺で鐘を鳴らしてきた後、家に戻り裸足の足のままずかずかと我が家へ入っていった。
「もう、足をちゃんとふいてから上がってよね」という、妻の言葉すら聞き流し。唇を歪め、落ちそうなくらい長い灰を抱えたタバコをくわえたまま、作業務のような僧衣に身をまとったまま二階への階段を上っていった。
電子音の目覚ましがいっこうに止まない第二土曜の朝。
今日もまた朝からリョーマをテニスの誘おうと思っていたのだ。絶頂の日和だから。
「リョーマ、いつまで寝てんだ?起きろ」
バンとドアが勢いよく音を鳴らし、南次郎がリョーマの部屋に足を踏み入れた。
リョーマはベッドにうずくまり、南次郎からはその姿が伺えない。南次郎はずかずかと部屋に入ってくると未だに五月蠅い目覚ましを止めた。
すぐ傍にベッドからはみ出したリョーマの髪の毛が綺麗に伸びていた。
朝日に当たって輝く絹のような髪だった。
南次郎はリョーマのそんな姿を見て、話しかけた。
「いい加減起きろや。リョーマ」
「ん・・・」
寝起きが悪いのは自分にそっくりなもので、よく分かっていた。
だがいい加減起きないリョーマに南次郎は待ちきれず布団に手をかけた時、布団の中からうっすらと消えそうな咳と声が聞こえてきた。
「気持ち悪い・・・」
「ああ?」
ボソッと聞こえたリョーマの声に、南次郎は布団にかけていた手をすっと、戻した。
そしてくわえたタバコの灰をリョーマの机の上にある小さな缶の器に落とすと、部屋の外から出た。
すると、同じ二階の部屋から居候の菜々子が出てきた。召かし込んでいることからすると、今日はどこかに出かけるのだろう。南次郎はそう思いつつも菜々子に話しかけた。
「菜々子ちゃん、リョーマのヤツが風邪をひいてる見てーなんだが」
「ええっ?風邪ですか?確か下にお薬があったと思うのでちょっと見てきます」
「ああ、悪いな」
そういうと、菜々子は足早に階段を下りていった。下では妻もいるため南次郎は再びリョーマの部屋に戻った。
勉強机の椅子をベッドの前に持ってきて、大きく腰掛ける。
自分用の灰皿を持ってきて、ベッドのすぐ傍の机に置いた。
そこにたまった灰を落としながら、南次郎はリョーマに話しかけた。
「お前、昨日何時まで起きてたんだ?」
「・・・わかんない・・・ゲームやってたから」
ベッドの中から聞こえる弱々しい声。普段この声を聞くものは南次郎しかいないだろう。弱い自分を守ろうとしても、守ってくれる人は必ずどこかにいるのと同じで、リョーマは自分の体調が悪いときにはこの父に頼るほかなかった。母にも始めのころは頼っていたが、母は優しすぎた。
その優しさが、リョーマは嫌でたまらなかった。
弱々しい声からは、多少の生意気な口調は残るものの、南次郎には”可愛いコトリの囁き”のようにしか感じなかった。ただ、弱った子供だからこそ、もっと苛めたくなるのは大人の本能だった。
「チッ。ガキはとっとと寝るンが普通だろや」
「明日は休みだからいいじゃん・・・」
「なにいってんで。今日はテニスやるんじゃなかったのか?せっかくオトウサンが迎えに来てやってんのにへやばってるヤツがあるか」
にやりと、笑っているような口調が目に余るようだった。
しかし、リョーマはこのとき布団の中に身を潜めていたため、すぐ傍の狼に気付くことはなかった。
暫くしてから、リョーマの部屋のノブが鳴った。コンコンと音を立てたあと、女の人が聞こえてきた。
「おじさま?」
菜々子の声だった。
南次郎はよっと、声を出すように椅子から立ち上がるとドアの方へ近づいていってノブを回しドアを開けた。ドアを開けた先には案の定、菜々子が立っていた。
「あの、これクスリです。リョーマさん、大丈夫ですか?」
南次郎がドアと壁の隙間に腕をかけているため、その裾が邪魔になり菜々子からはリョーマの姿が見えなかった。そういうよりは、南次郎がリョーマの姿を見せなかった、そう言った方がいい状況だった。
「リョーマのヤツなら大丈夫だろ。それより菜々子ちゃんいいのか?出かけるんじゃねぇのか?」
「えっ?いいですよ。だってリョーマさんが寝込んでるのに・・・私だけ・・・そんなこと」
「んなことで休んだらいけねぇな。さ、菜々子ちゃんは行ってきなさい」
「で・・でも今日はおばさまもPTA会議でいないですし・・・」
「んなこと関係ねぇぜ?菜々子ちゃん」
「・・・そ・・そうですね・・・すみません・・・」
「いいってことよ。楽しんでこいや、菜々子ちゃん」
「はい・・」
どこかまだ気になっているようだったが、南次郎の強い言葉に菜々子はホッと笑い南次郎にクスリと水の入っているコップがのったお盆を渡すと部屋に戻っていった。
南次郎は菜々子から受け取ったお盆を片手で支えてドアを閉めた。
暫くした後、菜々子が家から出て行く玄関の音が鳴った。
家にはリョーマと南次郎しかいなくなった。
南次郎はベッドの上にクスリを乗せると椅子に座り前屈みになってリョーマのいる布団を見つめた。
布団の中でうずくまるリョーマの形を、南次郎はジッと見つめた。普段、小さい割には大口を叩き、力も、でかさも違う自分に、真っ向から挑んでくる少年は、今ここで、こんなにも小さい存在なのだ。
しばらくすると、リョーマが顔を現し、熱でうるんだ瞳を南次郎に向けた。
南次郎は、リョーマを見てタバコをくわえた口元をサディスチックに上げた。
「やっと顔見せたな、リョーマ」
南次郎は座ったまま、雑誌を広げていた。
「人の部屋で何読んでんの?」
「グラビア雑誌。おめぇも見てえのか?」
リョーマは暫く黙った後、もう一度口を開いた。
呆れたように。
「そんなことより、クスリは?」
「さっき菜々子ちゃんが持ってきたぜ?」
「だからそれちょうだい」
「あーあ、大人にはもっと”ソンケイゴ”使わなきゃいかんだろ?ガッコでぴちぴちの先生に習わなかったのか?」
腿に手を置き、立ち上がると南次郎は机の上に置いたクスリと水を手に取った。
「ほれ、クスリ」
南次郎はクスリの袋をリョーマの顔のすぐ傍の枕元に投げた。パサッと僅かな風を起こして、袋からクスリが少し出た。リョーマはそのクスリに手をかけた。
「何錠?」
「子供2錠。」
「・・・」
南次郎は、わざと“子供”と付け足した。リョーマの反応が見たかったのだ。
リョーマはクスリのカプセルを二つ手に取ると口に運んだ。
そして南次郎に手を出す。
「水」
と。すると、南次郎はにやっと笑い、手に持っていた水を自分の口の中に流し込んだ。リョーマはその行動に驚き、南次郎の腕の裾を掴もうとしたとき、逆に自分の細い方を捕まれ口に南次郎の唇が押しつけられた。それと同時に、口の中になま暖かい液が注ぎ込まれ、リョーマの咥内に入っていたカプセル状のクスリは体内に流された。
深く口付けられ、息をする手段を奪われたリョーマ。唇を舐めながらやっと南次郎はリョーマの唇から離れた。リョーマは涙を溜めた目で少し噎せると、南次郎を睨み付けた。
「な・・にすんの・・・」
「そりゃ、キス、だろ?」
「じゃなくて、なんで・・・」
口元を手で押さえ、リョーマは俯せになり枕に顔を埋めた。
ハプッと柔らかそうな枕は音を立ててリョーマの顔を沈めた。
「あたりめぇだろうが。お前と遊ぶのを楽しみにしてんのによ。なんだてめぇ。そんなにヘタバリやがって」
「・・・」
「ちっとは根性見せろや、なぁ」
「・・・じゃあやるよ、テニス」
なんと可愛い性格なのだろう。
南次郎はそう思った。この掌でうごかせれる程儚い少年は、やはり誰よりも愛しくてしょうがなかった。南次郎はもうすでに、リョーマのことを一人の人間として愛していた。
この性格に育てたのも。この養子に育てたのも総て自分。南次郎は自分の子供であることも忘れ、リョーマを愛した。
総てここまでは南次郎の思惑通りに進んでいた。南次郎は自分の策に溺れた可愛い羊を、今や食べ頃といわんばかりに口元を不吉に歪めて読んでいたグラビア雑誌をパタンと床に投げ捨てた。
「やめやめ。テニスはもういいや。」
「?じゃあ、なにすんの?」
南次郎は暫く悩むポーズをしてから、ニヤリと笑った。
「大人の遊び・・・ってやつ・・?」
「・・・んなのヤダにきまってんじゃん」
「ちっ。」
それでもやはりリョーマは愛しかった。学校に行くようになった小学生のころから、南次郎はリョーマに会う回数が少なくなってきた。だが、リョーマの口からクラスの話題が出ないのには、心の底から安心していた。自分が聞かなければ答えない。自分の聞くことには答えるリョーマが可愛くて仕方がなかった。
南次郎はギシッとベットに腕を突き、リョーマの顔のすぐ上に顔を持ってきた。
伏せてこっちの顔を見ないリョーマは残念だった。そう思ったが、後ろから見るリョーマの項が妙に媚態だった。ベッドについたての重みで、ベッドがグッと下に沈む。
「さっきの話聞いてなかったのか?今は母さんも菜々子ちゃんもいねえもんな」
リョーマはその言葉にドキッとした。何度も南次郎に直前までやられたことのあるリョーマは南次郎のこの発言が何を意味しているのかすぐに心の中でリンクした。
「うつむいてねぇで、こっちみろや、少年」
ぐっと、肩を掴まれ、仰向けにさせられるリョーマ。熱で頭がくらくらする。体は南次郎の思うがままに仰向けになった。南次郎の手には、リョーマの肩は小さすぎた。
仰向けになったリョーマは視線を南次郎の鎖骨当たりでとめた。顎の無精ひげまで、視界に入る状態。それ以上上に目をやったら確実に南次郎と目が合うためである。ある線で、リョーマはそれ以上目線を上げなかった。
「どうしたリョーマ、熱でくたばってんのか?」
口元が歪んでいるのが分かる。ふしだらな僧衣。タバコ臭い口元で。
「こっちみろや。」
グッと肩を掴まれる。リョーマは右下に視線を落とした後、じゃっかん熱で潤んだ目で、南次郎を睨み付けた。リョーマの目に映ったのもは、案の定、笑う南次郎だった。
挑発に見事に乗ってくるリョーマは南次郎にとって最高の人間だった。
南次郎はにやりと笑うと、リョーマの頭の後ろの髪をグッと掴み、自分の口にリョーマの唇が当たるように抱き寄せた。熱で弱ったリョーマをこんな風に弄ぶのが、南次郎にとって快感だった。
「んんっ・・・」
酸素を求めてくる瞬間を、南次郎は狙っていたように、リョーマが不意に開いた唇の隙間から舌を進入させた。唇が不意に離れたすきに垂れる銀の液が粘着音を放った。
リョーマの口腔で、南次郎の舌が生き物のように歯形をなぞる。
深く噛みつかれるように奥へ奥へと押されるリョーマ。南次郎は長い接吻を終えるとリョーマの唇を舐めた。リョーマはすぐ近くにある南次郎の目を睨んだ。
「いつもやってることじゃねぇか。そんな可愛い目で睨むなや」
南次郎はリョーマのその視線を軽く交わしながら、淫らになった寝巻から見える鎖骨に目をやった。
そして不敵に笑みを浮かべるとリョーマの耳に噛みついた。
「ひゃあぁ・・あっ・・・」
ゾクリとした感触に、リョーマは声を上げた。ぬめりとした生暖かい舌の感触。それが耳を甘咬みしたりした。そして、リョーマ肩に顎を乗せた南次郎が耳元で低く声を出した。
「おめえ、いつもそんなカッコして寝てんのか?リョーマ」
「え・・・?」
「んなかっこして寝ころんで、誰か来たらどうするんだあ」
「別に・・・」
「甘いな」
「え・・」
今度は手首を捕まれ完全にベッドに押し倒された。枕に見事にヒットして、リョーマは柔らかい感触に埋まった。そして、南次郎は今まで重く座っていた椅子から立って、リョーマの手首をベッドに押しつけたまま、リョーマの体をまたぐように座った。
上から覗いたリョーマの体は媚態そのものだった。広がった髪の毛、うるんだ瞳で睨まれても。南次郎は相変わらずの目で、リョーマを見た。
「遊んでくれるんだよな?リョーマ。セキニンとれや」
手首を押さえつけられたまま、南次郎の唇が首筋に落ちてくる。首筋に触れる感触と、咬まれる痛みに、リョーマの体が震えた。
「やっ、・・・やめ・・」
ぎゅっと目を瞑り、抵抗が出来ないのを知りながらも自分の腕に力を入れたが、それはすべて南次郎によってふさがれた。ほとんど身動きできないまま、リョーマは南次郎に首筋に痣をつけられた。
「やめれだ?いつもは嬉しそうに抱かれてるんじゃねぇか」
「今日は・・風邪ひいてる・・っんん」
強制的に南次郎によって唇をふさがれた。
「風邪もなんも問題じゃねえな。来いやリョーマ、居間で相手してやっから」
そう言い残すと、南次郎は裸足の足を床におろして部屋から出て行った。出て行く寸前に、口元が笑った気がした。リョーマは上半身を起こすと、さっき南次郎に力強く捕まれた腕をもう片方の手で握った。
南次郎はリョーマが必ず来ると知っていた。
あのプライドが高い少年が、このまま引き下がるとは思わなかった。挑発したら必ず巻き返してくるあの性格が南次郎はたまらなく好きだった。
あのこどものプライドを崩してやるのが、南次郎にとってどんなに楽しみなことか。
南次郎はフローリングの床を裸足のままで歩いて、テレビの正面にあるソファーに腰を下ろした。
居間はさっきまで誰もいなかったせいか、カーテンが中途半端にしまっていて、そこから僅かな光が漏れているだけの、薄暗い部屋だった。
アイツか来るまで暇を持て余そうかとテレビのリモコンに手を伸ばしたころ、ニヤリと南次郎が暗く笑った。
「どうした、早かったじゃねぇか」
南次郎の後ろではドアにもたれ掛かったリョーマの姿があった。
「・・・アンタが来いっていったじゃん・・・」
「まぁ、そりゃそうだな。もっとこっち来いや」
ははは、と影のある笑いをする南次郎に、リョーマは後ろから近づいていった。フローリングの床の上を歩くと裸足のリョーマの足からはぺたぺたと音がした。
そしてその音は、確実に南次郎の方へ近づいていった。
リョーマは南次郎のすぐ目の前に立った。南次郎はソファーに偉そうに座り、リョーマを見ると、くわえていたタバコを指で掴み、手前のテーブルの灰皿にタバコを押しつけた。じゅっと音を立てて、灰が粉になった。リョーマはそんな南次郎の行動を、ふぅっとため息をついて横目で見た。
そんなリョーマを見て南次郎は口の端を上げて笑った。
「どうしたリョーマ。ここへ来たって事は覚悟の上か?」
「なんでそうなるの?」
「んなもんあたりめぇだろうが。そんな寝巻の着方しやがって。食べてくださいっていってるようじゃねえか、ああ?」
スッと人差し指で乱れたパジャマを指差す南次郎。
もともと寝巻などは寝るときに着るものだからリョーマはあまり気にはしてなかった。だから着るのも脱ぎやすいようにボタンは全部とめてはなかった。
「学校でも、んなカッコしてんのか?」
「してるわけないじゃん」
「いい口答えだ。ちょっとこっち来いや。もっと顔を見せてみろ。お前の顔が見たい。」
そういって南次郎はリョーマの腰を掴んで寄せる。タバコ臭い匂いが、リョーマの鼻を突いた。右のテーブルの上に乗っている灰皿を見れば、タバコの吸い殻の山。
「何本吸ったの?」
「ガキのお前には関係のないことだな」
「ふーん・・」
「そんな口叩けるのも今のうちだぜ。リョーマ」
南次郎はセクシャルにリョーマの腰に触れていた腕をグッと引き寄せると自分が座っていたソファーにリョーマの体を投げ落とした。ドサッと音を立てて、リョーマの体が自分の身長と同じくらいのソファーで横になった。ソファーに落ちた衝撃で、熱が出ているリョーマは一瞬頭がクラッとぐらついた。
そして抵抗できぬまま、南次郎の深い接吻を再び受け入れた。
「んんあ・・・はぁ・・・」
南次郎の舌がリョーマの咥内を犯す。曇った吐息混ざりのリョーマの喘いだ声はどんな女の声よりも綺麗だった。リョーマの首筋から見える白い肌は、どんな雪より白いだろう―――と、南次郎は思った。
「もっと声を聞かせてみろや、リョーマ」
もっと声が聞きたくて、南次郎はリョーマのパジャマのボタンに手をかけた。
プツンプツンと、一つずつ乱暴にボタンを外していく南次郎。早くリョーマのその白い肌が見たくて、手元が震える。ようやく邪魔なボタンを外し終え、南次郎は真珠のように綺麗な白色をしたリョーマの肌に目をした。薄く暗い部屋に、僅かに入ってくる光で、リョーマの肌は白く輝いた。
そして待っていたかのように、南次郎はリョーマの胸に咲いた突起に噛みついた。
「ひゃあっ・・・」
あまりにも過剰な反応。熱があるせいか、リョーマの体は過敏になっていた。南次郎はそのことにすぐに気が付いた。そしてわざと、ぬちゃ・・・と湿った音を出しながら、リョーマの胸の突起を責めた。大きなゴツゴツとした手はリョーマの突起を摘んでは弾いて弄くった。その度に、涙混じりのリョーマの声を聞いて、南次郎自身興奮を覚えた。
もう、その体は媚態そのものだった。
リョーマの体は、誰にも似ず、一人の人間として育った。
南次郎はリョーマの半身に手を伸ばしていった。
そして、股の上に少しずつ自己主張を始めようとてんを向いているリョーマに触れると、それを大きな手でグッと掴んだ。
「ひゃっぃ・・・んん」
リョーマの体が大きくビクンと震えた。電流の走ったような快感と同時に、根本でぐぐっと精が圧縮される苦しさがリョーマの体を襲った。
「少しは育ったか?リョーマ」
耳元で南次郎はそう囁くと、目尻にたまった涙を舌で掬った。そして、己の顔をリョーマの股にまで持ってきた。熱の所為でぼぅっとしているリョーマの反射神経は鈍っていた。南次郎の思惑が行動になるまで、それに気付かなかったリョーマ。南次郎は自分の顔がリョーマの股の上まで来ると、いったん体を起こし、リョーマのズボンに手をかけた。その時、ようやくリョーマはビクンと体を跳ねさせて身を捩らせた。
「やっ・・・やだぁっ・・・!」
そんな言葉も虚しく、リョーマがその言葉を言ったときには既に遅かった。南次郎はリョーマのズボンにかけた手を下着ごと一気にしたまで引きずりおろした。
露わになったリョーマはすでに先端部分が濡れて光っており、目に見えて自己主張をしていた。そして自分自身を慌てて隠そうと、己の股に両手を運んでくるリョーマ。
プライドの高い少年は、今自分の目の前で辱められている。南次郎は不敵に笑った。
そして、リョーマが己を隠していた自身に目をやった後、涙が次々と溢れてくる瞳に目をやった。あいかわらず、リョーマは南次郎を睨んでいた。しかし、涙のたまった目で睨まれても、南次郎は何も感じなかった。むしろそんなリョーマは南次郎の性欲に火をつけた。
「手ぇどけてみろ。イかせてやるから。どうせ一人じゃろくに抜けねえだろ?」
その通りだった。リョーマは一人で自分の精を放ったことがない。いつも南次郎にやって貰っているため、リョーマは自分で自分の精の放し方を知らなかった。それもつまり南次郎の策だった。
リョーマは、自分の熱をどうにかしたくて、抑えていた両手を少しだけ離した。
それでも南次郎は飽きたらず、どんどんと欲が増してくる。
「そんなんじゃねえ。全部だ。見せてみろ」
サディスチックな言葉は、リョーマの心に釘のようにさしかかった。
リョーマは仕方がなく、両手を完全に己から放し、南次郎を見た。しかしそれでも南次郎は暗い笑みを浮かべるだけだった。しかし、手をどけてもいっこうに南次郎は自分のモノを触ってはくれなかった。リョーマは恐る恐る南次郎を見ると、南次郎は不敵に笑うだけだった。
「・・・今度はな・・に?」
リョーマは耐えきれずに、自分から南次郎に話しかけた。もうイかせてくれるのなら、なんでもするといわんばかりに。潤んだ涙の跡が、筋になっていた。
「何をして欲しいんだ?言ってみろ」
どこまでもリョーマのプライドをずたずたにしたかった。南次郎はリョーマにそう問いかけた。不適な笑みを浮かべながら。
流石にこれには答えないだろう・・・南次郎はそう思っていたが、リョーマの口からは意外な言葉が漏れた。普段のあの子供からは感じることの出来ない美声と、南次郎は感じた。
「舐めて・・・」
にやりと、南次郎は笑い。リョーマの正規にそっと触れた。
ゴツゴツと角張った南次郎の手は暖かい感触を持った。リョーマはダイレクトに触れられ、ビクンと体をくねらせた。指と指に挟まれたり、先端を軽く押しつぶす。
「やあっ・・・ああ」
その度に漏れる声が、南次郎は心地よかった。だが、心とは裏腹にとげとげしい言葉を放った。
「お前が舐めてくださいっていったんじゃねえか」
南次郎の大きな手にとって、リョーマの性器は小さすぎた。それ故、指での扱いがリョーマにとってものすごい快感となっていった。
指で扱われ、リョーマ自身からは既に先走りの液が漏れていた。差し込んでくる僅かな光に、リョーマのそれを当ててみると濡れて光る。南次郎はその液を舌で掬いそしてくわえ込んだ。
「あ・・あっ・・ん・・・」
リョーマが舌で舐め合わされる感触につられ喘ぐ。だが元はあの生意気なこどもだ。リョーマは僅かながら理性を保ち、目をぐっと瞑っては荒い息づかいで行為を続ける南次郎の髪の毛を掴んだ。指先に力が入らなかった。リョーマの行動は、狼の前で僅かに暴れる子羊のようでしかなかった。
「や・・・ぁ」
はっきりした拒絶の声ではなかった。南次郎は、リョーマがそう言うたびに、「感じてんじゃねぇのか」と、サディストに笑うのだった。
舌と指で、根本から丹念に扱われ、リョーマのそれは段々のふくらみを増していった。
そして、南次郎の咥内で、脈打つほどあの小さかった性器が膨らんだ。
「お・・・ねがい・・も・・・ぅ」
リョーマの悲願の声で、南次郎は「しかたねえな」と呟くとグッと舌先に力を入れてリョーマ自身の先端部分を甘咬みし大きく吸った。その瞬間、ドクンと脈動を唸らせてリョーマの精が南次郎の咥内に注ぎ込まれた。
南次郎はそれをゴクンとわざと空気と一緒に飲み込み音を鳴らした。
腕の甲で口の周りの液を拭き取ると、リョーマを真っ先見た。
リョーマははぁはぁと乱れた息の隙間から弱々しくもあり生意気な声を出した。
「不味くないの?」
「リョーマのだから不味いわけないだろが。なんだあれか、今度お前にも飲ませてやるよ」
「絶対やだ」
いつまでたってもこの性格だけは変わらない、いや、変わらないで欲しいなどと思いながら、南次郎は自分の人差し指をリョーマの口腔に押し込むとリョーマの唾液で自分の指を濡らさした。ゴツゴツした南次郎の指がリョーマの咥内で動き回る。
「んはぁっ・・・なに・・・」
「よく濡らさないと痛いだろうがよ」
「んんっ・・・・」
そして、指に付着した液を保ちながら、南次郎はリョーマの腰を浮かせた。
そして後ろの蕾にツプリと指を差し込んだ。
ビクンと、過剰になほどにリョーマの体が跳ねた。
「ひゃああっ・・・やっ・・・」
キツク締まったリョーマのそこは、南次郎の太く、硬い指ですら拒否反応を示した。それでも、南次郎は指をそのままリョーマの胎内へと進入させていった。ゴツゴツとした感触が内壁を伝わり、リョーマの中で感じるものとなった。リョーマは自分の中にある異物に嫌な気分を覚えた。そして、その異物は体の中をたくみに移動した。
南次郎の手は太く大きかった。そして南次郎は全部埋めた人差し指を第一関節で無理に曲げ、蕾を解すのと同時にリョーマの中にある性感帯をつついた。
「ひゃああん」
声を上げたら南次郎はにやっと笑いそこばかり責め立てた。ぐいぐいともっと奥へつついた。
内壁を押し上げられる感触に、リョーマは腰を揺らした。「とんだインランに育っちまったもんだな。誰にもそんな姿、みせんじゃねぇぞ」と、南次郎は後ろからリョーマに言った。
一つの指になれてきたころ、南次郎はもう一本指を増やした。ググッと開ききるくらいに大きく押し開けて、リョーマは南次郎の指をくわえ込んだ。息が苦しいくらいの圧迫感にリョーマの目からぽろぽろと真珠のような大きな粒の涙がこぼれ落ちる。
性感帯を何度もつつかれ、リョーマのソレは再び熱を取り戻していった。
「いいかリョーマ、よく聞け。オレはリョーマを他人で感じるようには育ててねえ。俺自身で感じるんだ。オレ以外では感じるんじゃねえぞ。いいな」
南次郎のその言葉に、リョーマはもうただ首を縦に振って頷くことしかできなかった。ぐいぐいと内壁を押されてるのが分かった。南次郎は、そろそろだな、と思い緩くなった蕾から指を引き抜いた。
ズルリを胎内から何か抜けていった感触にリョーマはやっとゆっくりと息をはいた。
しかし、息をつく前にリョーマはゴクンと自分の喉を鳴らした。リョーマの桃の内側ををグッと掴み左右に重みをくわえる。リョーマの股が、限界まで開くとリョーマはビクンと条件反射を起こし、大きく声を上げる。
「や・・やだぁ・・・やめっ・・・」
大きく股を開かされ、リョーマは自分の陵辱した姿に涙をこぼした。ナイロン製のソファーはリョーマの涙を弾いて、原型のままフローリングの床に暗い後を作らした。
股を閉じようと必死に力を入れるが、南次郎にはなんの抵抗にもならなかった。
リョーマの股を、グッと開かして、南次郎はその間に割り込む。そして、ずずっと腰を進めていった。
「ひゃああああっ・・ああ・・いたっ・・いたいっ・・・っ」
ゆっくりと、内部に入ってくる南次郎のもの。リョーマはそれを体で受け止めた。
先が埋め込まれただけでも、泣き叫ぶほどの激痛。大人の完全な性器は、少年にとっては大きすぎた。しかし南次郎は容赦はせず、そのまま自らをリョーマの蕾に埋めていった。自分の中から、脈打つ大きな何かが、リョーマの内壁に振動をくわえた。
あの少年が今こんな風に泣き叫んでいると、他の人たちは思いもしないだろう。
「い・・いたあっぁ・・」
輝くダイアモンドのような目は痛さで細められ、絶えず真珠のような大粒の涙がリョーマの目尻から落ちていった。南次郎も、そんなリョーマの媚態に対しての性欲に、歯止めがきかなくなっていた。
この子供をもっと自分のモノにしたい。他のものが触れぬように、盗らぬように。南次郎はリョーマの中に自分を埋めていった。
「ほれ、全部入ったぜ。目ぇ覚ませや」
南次郎が目尻に軽く唇を落とす。ググッと腰に圧迫感が感じられ、ずっしりとそこの部分が重い。そして繋がっているそこからはぎしぎしと鈍い痛みが伝わってくる。南次郎も、はっきりいってこんなにきついものかとは思っていなかった。そして己が入った今、この少年に酷く深追いしていたことに気付いた。
南次郎の言葉に、リョーマはうっすらと目を見開いた。
「い・・・たぁ・・・」
「我慢しろや」
ここまで少年がプライドをなくしているのかと思うと南次郎はゾクリとした。
南次郎にとってリョーマは可愛い子猫でしかないのだ。
埋まった南次郎から僅かながら大きな脈動が聞こえる。ドクンドクンと、血液の流れる振動とリョーマの蕾から伝わってくる熱い痛みが重くなった。
”すぐによくしてやるよ”そう、自信があるような笑みで、南次郎はゆっくりと動き始めた。始めは大きく円を描くように回され、蕾を解した。そして次からはゆっくりと抜かれて、再び奥に突かれる。リョーマは奥を突かれるたび、ずしっと重荷を感じた。段々早くなっていく動きに、リョーマはある一点を突かれた途端に声を上げた。
「ひゃん・・ああっ・・・」
そして一度声を上げると、南次郎は口元をニヤリと歪めるとそこばかり責め立ててくる。同じところを感覚で当ててくる南次郎。あまりにも13の少年にとっては大きな快感になったいった。
「いいか?次は動くぞ」
「ひゃっ、やだ・・・っ・・」
リョーマの言葉などお構いなしに、南次郎は自らの腰を動かし始めた。
抜かれて、突かれて、繋がったそこからは粘着音と湿った音が嫌らしくこの二人以外誰もいない部屋に響いた。
リョーマのものは再び硬くそして天へと高く勃ったそれから、透明な蜜が漏れ始めていた。それは、その行為でのリョーマの心の現われのようだった。南次郎は自分のとは比べようのない小さく儚いそれを、掌でグッと掴んだ。小さいリョーマの性器は、南次郎の手によって、根本からすっぽちと収まった。
「はぁっあん・・・ああ」
リョーマはソファーの生地をグッと掴んだ。そして、絶頂が近いのを南次郎に一生懸命声にして伝える。
南次郎は、後ろから衝撃を与えるリズムと同じ風に、リョーマの性器を上下に扱う。
びくびくと、痙攣したように、震えるリョーマ自身。
「もぉ・・・あは・・・あ・・」
「ああ、出すぞ」
「んんっ・・・」
リョーマが2度目のせいを放つのと同時に、南次郎はドクンと脈動をうってリョーマの胎内に大量の熱い精を放った。
情交が終わった後で、南次郎は淫らな僧衣を少し直し、ながらソファーで寝ころぶリョーマに話しかけた。
「風邪ぐらいでへやばんなや。来週は子供の遊びだ、テニスやりてぇんだろ?」
リョーマは今、グッスリ眠っていて南次郎の言葉に気付くことはなかった。淫らになったパジャマも綺麗に着せてやり、リョーマの体にも毛布をかぶせてやった。無防備に寝る赤ずきんのようなリョーマの寝顔を見て、南次郎はリョーマの寝顔を見て口元で笑った。
そしてリョーマの髪を軽く撫でてやると、子猫のように気持ちよさそうな表情になる。
「まだまだ―――ガキ・・・だな」
いつか大人になり旅立つ日まで、決して離さないと心で思いながら、南次郎は煙草に火をつけた。
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